こんにちは、さだぢです。
俺自身2D3D両方やったことで培った技術の中で身に付けた「ライティング塗り」というちょっと変わった手法があって…。
周りで知ってる人や使ってる人が少ないけど、絵を描く上で便利な手法で「光」の理解や「塗り」の訓練にもなるやり方なので紹介します。
目次
ライティング塗りとは?
これはレイヤーに直接描くのではなく、光を調整レイヤーのマスクだけで要素ごとに描いていく手法です。
別にオリジナルの表現じゃなくてこの表現手法を使って描いてる人はいますが、この手法の名前をなんて言ったらいいのか謎だったので、用途と手法から「ライティング塗り」と呼んでます。
ピクサーで「トイストーリー3」や「モンスターズ・ユニバーシティ」の色彩・照明の監督をしていた堤大介という人がこの手法で描いてて、Twitterで見かけたア・メリカという方も同じ手法でした!
「ライティング塗り」で必要な要素と考え方
厚塗りは1つのレイヤーにガシガシ描いていく手法ですが、ライティング塗りは厚塗りを要素ごとに分解して絵を作るイメージをしてもらうと分かりやすいと思います。
手法としてはアニメ塗りの要素を分けて描くプロセスを厚塗りでやってるのに近いかも。
固有色の上に光を順光、反射光、逆光と各自調整レイヤーで描いて足して絵を作るイメージです。
- 固有色
- 順光
- 反射光
- 逆光
- 陰影
- 質感
- ハイライト
ザックリ必要な要素はこんな感じ。
※順不同なのは勘弁
固有色の考え方
固有色は単色をイメージしてもらえれば分かりやすいと思います。
足し算を基準に考えると論理的に絵作りがしやすくて、そのためになるべく簡単な要素から作っていくことが大事で「固有色」だけの状態から始めるのがやりやすい方法。
固有色というのは単色であれば後から色を加えればいいのでグレー色でも作業してもよくて、この段階が一番スピード感を持って作業できる工程で、シルエットや構図はここで考えたり試したりするのが楽。
ちなみにこの工程では「投げ縄ツール」を多用して描き進めることが多い。
陰影の考え方
陰影は「陰」「影」「OC」の3つに分解して考えます。
「陰」は物質の立体感、量感を表現する役割を担ってて、プラスチックのようなチープで軽そうなモノは「陰」が弱いし、ずっしり重いモノは「陰」が強いってイメージを持つといいかも。
「陰」だけの状態だと嘘っぽさのある3D感が強い笑
「影」とは球体が床に落とすカゲのこと。
「陰」は物質同士の関係性を表現する役割を担ってて、球が床に影を落とすことで「床の上に置かれた球」という球と影の関係性が理解できて、空間を認識できるようになる。
この関係性を作れる「影」が結構リアリティーや魅力を出すポイントだったりするかも。
OCも陰影の1種で、物と物の間にある隙間にできる陰影、光が届かない領域にできる陰影というイメージが分かりやすいと思います。
接地感のリアリティーとか実在感の説得力を出すのに凄く大事。
絵作り的にもキュッと黒い色を入れられるので絵を締める要素としても使える。
順光の考え方
順光の光源は太陽光や室内光がほとんどだと思うんですが、大体「上」「斜め上」から光が来てるイメージ。
順光には状況やイメージや感情を伝える力があり絵のイメージの指標になることが多い光なので、この時点で光の方向性が決まっていると楽。
例えば薄暗い森の中、閑散とした夜の商店街、真夏のビーチとか。
反射光の考え方
空間や回り込みを表現する力があり、空間に対して広がりを感じさせたかったら反射光は必要。
逆光の考え方
絵の中で目立たせたり、視線誘導を作ったりと特定の演出を表現するのに適した光で、切れ味や完成度を高く見せたい場合にも有効。
質感の考え方
質感っていうのは物によって違うので一括りでコレ!って言えないけど、何かしら質感を入れた方がいいのは間違いない。
ちなみにハイライトと汚れを意識するとクオリティーを上げやすいですが、観察に基づいた質感を入れると説得力が段違いです。
「ライティング塗り」のメリットとデメリット
メリット
要素を分解して描く方法は論理的に絵を組み立て描くので安定しやすいです。
この描き方は基本調整レイヤーのマスクで描いてるので途中から光の方向を変える、光の質を変える、といったことがマスクの調整だけで可能です。
ちょっと逆光を強く、反射光を弱く、影を弱く、といった部分部分での調整もラクで、この方法は他の人と連携したり、共有したりするのに向いてたりする。
デメリット
正直デメリットはほぼないと思ってますが、厚塗りで描いてきた人にとってはレイヤー数を増える、レイヤーを分けて要素ごとに描く、という作業は慣れないと面倒だし時間がかかるかも。
ライティング塗りはロジックで考えて、修正、調整を前提とした描き方として優秀な手法かなと思ってます。
どんなときに使える?
絵の最初の組み立て時に向いてます。
なのでコンセプトアートやイメージボード等の修正をしながら進め、説明することを求められるような場合には論理的に絵を組み立て、修正がしやすいライティング塗りは相性がいいです。
他にも厚塗り系の描き方だけど後々調整したい…という場合にも使えます。
例えば厚塗りの描き方で最後に部分的に逆光を足したい、反射光を足したい、ハイライトを足したい、けど後から光の強さの調整や加筆もしたい、という場合にライティング塗りなら後から加減ができるので調整が楽です。
最初のベースを厚塗りで描いて、仕上げや加筆に調整したい要素にライティング塗りを使う、といった感じです。
まとめ|ただの厚塗りでも部分的に役に立つし訓練にもなる
ライティング塗りを使うにしろ、使わないにしろ、要素を分解して組み立てることをやってみると絵を論理的に作る意識を訓練することができて「塗り」と「光」についての理解も深まるし、作業自体を仕組み化して楽できる方法なのでオススメです。
よかったら参考にしてください。
厚塗り系統って「光」を描くタイプの絵だと思うんだけど、光が複雑と思ってた時に要素を分解して組み立てて考えて安定するようになって今も意識してるワークフローは再現性の高い推しテク pic.twitter.com/wgnN5ST95G
— さだぢ (@sadaji_art) 2018年5月21日
おまけ
使用してるのが調整レイヤーだけではないんですが、レイヤースタイル等も駆使して5分くらいで簡単に球のライティングを組み立てるプロセス動画もYouTubeに上げてるのでよかったらぜひ。
▼厚塗りの「光」についてより理解を深めたかったらこちら▼
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