こんにちは、さだぢです。
九州デザイナー学院って知ってますか?
福岡にある専門学校なんですが、そこのゲームクリエイター学科学生の3DCG作品がヤバいと作品発表の度にSNSで話題になっており…。
俺自身も同じように興味があったので取材させて貰えないかと連絡したところ九州デザイナー学院の現役学生と学校の先生方の両方から話を聞かせていただくことが出来ました。
ちなみに俺自身も2D3Dを使った作品を作っててギャラリーから見れるよ
目次
九州デザイナー学院の現役生徒に話を聞かせてもらえました
九州デザイナー学院ゲームクリエイター学科
2016年ウェブサイト公開https://t.co/H7F9KZwKjU pic.twitter.com/htgkcAlCua— 九州デザイナー学院ゲームクリエイター学科 (@kdggame) 2017年3月11日
ーー栗本さん、野路さん、今回取材に応じていただいてありがとうございます。
お二人について知りたいので簡単な自己紹介とどういう経緯で九州デザイナー学院に入ったのか教えてください。
ー自己紹介ー
栗本:九州デザイナー学院ゲームクリエイター学科2年の栗本奈実です。
栗本:入学したきっかけは体験入学に参加した際、見せて頂いた先輩方の作品に圧倒され、自分もこんな作品を作ってみたい!と思ったのがきっかけですね。
野路:九州デザイナー学院ゲームクリエイター学科1年野路皓貴です。
野路:自分は19歳のときに、地元のCGアーティスト方と出会い、その方の元でバイトをしていました。 当時は作品などを持っていませんでしたので、CGが学べる学校に入ることを決め、そこで紹介されたのが、九州デザイナー学院でした。
学校全体で作品は背景やハードサーフェスが多め?
ーー「九州デザイナー学院ゲームクリエイター学科」のTwitterのアカウントでお二人の作品を拝見しました!
今の学生ってこのレベルが当たり前なのか…と思いつつも気になった点がありまして、学生のレベル高いながら学校として全体的に「背景作品」「ハードサーフェイス作品」が多いような気がします。
これは教えてる講師の方々が得意だからとかそういった理由で…?
栗本奈実さんの作品(2年)
2016展示会 1年生作品 栗本 pic.twitter.com/SJDTi1Jro5
— 九州デザイナー学院ゲームクリエイター学科 (@kdggame) 2017年2月26日
2年生作品 栗本 Batmobile Batman vs Superman: Dawn of Justice pic.twitter.com/RXTBxlE862
— 九州デザイナー学院ゲームクリエイター学科 (@kdggame) 2017年6月18日
ー栗本さんが背景やハードサーフェス作品が多いと思う理由ー
栗本:九州デザイナー学院は2年制の専門学校で、あっという間に時間が過ぎていってしまいます。
栗本:その限られた時間の中で企業に良いと言ってもらえるポートフォリオを仕上げるにはフォトリアルを目指しやすい背景などのハードサーフェスを作るのが、近道だからだと思います。
ーーなるほど…2年制なんですね。与えられた時間から逆算して評価される作品を作るにはどうしたらいいか考えた結果、という理由を聞いて納得しました。
野路皓貴さんの作品(1年)
1年生作品 野路 LondonStreet pic.twitter.com/PV83UfbbBI
— 九州デザイナー学院ゲームクリエイター学科 (@kdggame) 2017年6月30日
学祭展示作品 1年生作品 野路 pic.twitter.com/0kTWqo6ynE
— 九州デザイナー学院ゲームクリエイター学科 (@kdggame) 2017年10月6日
ー野路さんが背景やハードサーフェス作品が多いと思う理由ー
野路:基本的に作るものは自分たちが作りたいものを選んでいます。
野路:しかし、作品を作るときには必ず最初に先生と相談をしています。その時に、よく言われるのがポートフォリオに載せて感動できるかどうかということ。
野路:そうなると絵作りや構図、モデルがカッコいいものを学生たちで自ずと考え、映画やゲームなどの背景やモデルを参考に作るものを選びなおしたり、作ったものの見せ方を変えたりしています。
ーーじゃあ学校の先生に言われて作ってるわけではなく、ポートフォリオに載せた時に感動できるレベルの作品を作る上でどうしたらいいか考えた結果として背景やハードサーフェイスのチョイスになってるんですね。
中で学んでる身としてレベルが高いと思う要因
ーー自分も3DCGを小さい塾のような場所で少しだけ基本的な使い方を学んだんですけど…。
使い方を最初に教わって残りの時間はひたすら課題の作品を作る、という学習工程なんですが九州デザイナー学院も同じだと聞きました。割と進め方は似てると思うんですけど出来上がる作品の質が全く違います。
全体的に作品のレベルが高い要因はなんだと思いますか?
九州デザイナー学院で学んでる身として実感してることを教えてほしいです。
学祭作品展示中です
他所は華やかですが、4階だけ平常通り笑
皆さまお時間あるかたは来場ください pic.twitter.com/RcoNkEqKDa— 九州デザイナー学院ゲームクリエイター学科 (@kdggame) 2017年10月7日
ー栗本さんが学校のレベルが高いと思うワケー
栗本:先生方の指示で帰宅後に良い作品を観るようにしています。学校での授業時間では集中して作品作りを、その他の時間では良いインプットを行うようにしています。
栗本:例えば、映画の良いと思った場面のスクリーンショットを撮っておくんです。日頃からそのようなインプットをしておくと、作品の題材選びから質の良いものに絞れるのではないかと思います。
栗本:初めから目標を定めているので、あとはリファレンスを何度も観察してクオリティを上げていっています。
ーーインプット大事ですよね。
中で学んでる身として比重を置いてる部分が「インプット」と「リファレンス」というのは学校の方向性が理解できるので参考になります。ちなみに先生方や先輩にオススメされてる作品や資料ってありますか?
栗本:日頃から良い作品を見ろと言われているのでたくさんあるのですが、主にvitaly bulgarov、scott robertson、daniel simonですね。
ーーなるほど…vitaly bulgarovやdaniel simonは自分も参考にしてました。工業系のコンセプトアーティストがお手本になってるんですね。
造形の授業です pic.twitter.com/kOfvaPJ3MH
— 九州デザイナー学院ゲームクリエイター学科 (@kdggame) 2017年11月6日
ー野路さんが学校のレベルが高いと思うワケー
野路:デジタルだけに終わってないことだと思います。
野路:アナログのデッサンであったり、模写や造形。それから企画を考える授業など、CGの作品を作る時に自分の見る力をアナログで鍛えていることも作品のクオリティにつながっていると思います。
ーー基礎力は大事ですよね。
ただ…こう言ったらアレなんですが基礎的な訓練はおそらく他の専門学校でもやってることだと思うのでレベルが高い要因ではないと思ってるんですが特に「これは良かった!」って思えた授業ってありますか?
野路:自分はこれまで、CGの勉強のためのアナログの授業を受けたことがなかったので、全部が勉強になり、それを自分のものにしようと思っていました。
野路:初めは、それらは別々に習得する物だと思っていましたが、それらには繋がりがあって(例えば、人体やデッサンなど)、それらを相互に学ぶことで、見る力を鍛えていると思います。だからそれが続いてできた今のデッサンと一年前のデッサンには明確な違いを感じました。
野路:良かったと思う授業はありますが、自分達が成長してると感じているところは、その相互に学んでいるものが繋がった時だと思います。
ーーなるほど…中で学んでる野路さんとしては特定の授業やカリキュラムが、というよりもCGに限らずアナログ含めやっていること全てが成長に繋がってると実感してるんですね。
ゲームクリエイター学科の先生にも話を聞きました
いつ頃からCG業界のプロにも注目され始めた?
北田塾11月その1開催
北田さん、熊本さん、モデカフェ武田(OB)の3人が参加です pic.twitter.com/iHNndhpUqV— 九州デザイナー学院ゲームクリエイター学科 (@kdggame) 2017年11月2日
ーーもしも学生時代の進路を選ぶ段階で九州デザイナー学院を知っていて3DCGをやりたいと思ったらここで学びたいと思えるくらいレベルが高いと思ってます。
どのくらいの時期から3DCGのプロの界隈からも「すげぇ…!」って言われるようになったんでしょうか?体感として九州デザイナー学院の話題が耳に入るようになったのはここ2~3年な気がします。
先生方:2005年から現在の講師陣になりました。それ以降、学科として毎年カリキュラムのブラッシュアップをしています。いまだに毎年毎年、試行錯誤の繰り返しです。
先生方:2014年からSNSで学生作品を発信しはじめました。
先生方:ありがたいことに、北田栄二さん(モデリングカフェ)をはじめとしたCG業界の方たちに、学生作品を評価していただき、九州デザイナー学院の名前を広めてもらっています。SNSで公開することで、九州デザイナー学院がどんなところか、外部の方たちにもCG業界を目指そうとしている学生たちへの認知度もあがっていると思います。
ーー今の講師陣になったのが2005年からでSNSでの発信をはじめたのが2014年からだったんですね…。
確かに九州デザイナー学院の名前を聞くようになったのは北田栄二さん含むSNSで情報発信してるCG業界の方々の影響だった気がします。
北田栄二さんの著書
今ぐらいのレベルになり始めた時期やキッカケ
北田塾9月
北田さん、熊本さん、モデカフェ福岡 奥村、前東、井上今回は1年生がメインに見てもらってましたね
アニメーションは今回から1年生4名です pic.twitter.com/QjWrLe06V3
— 九州デザイナー学院ゲームクリエイター学科 (@kdggame) 2017年9月29日
ーー2005年から現在の講師陣になったとのことですが、現在の学生作品くらいのレベルになり始めた時期、過程について先生方が考える範囲でもう少し詳しく聞きたいです。
先生方:ハードウェア、ソフトウェア(特にレンダラー)
先生方:2010年までの学生たちは、動画制作とコンセプトアートがメインでしたが、2013年以降は学生たちが目指す業界の方向性や質の変化に伴って、3DCGの静止画のクオリティが飛躍的に変わってきました。原因はそれまで目指していたゲーム業界でハイエンドなPBRベースのゲームエンジンなどが使用されるようになりハイクオリティのCGが当たり前になって、それを学生たちが目指すようになったことですね。
もうひとつは就職先をゲーム業界メインからCG映像業界も視野に入れるようになったことだと思います。
ーー早い段階で今のクオリティーには近づいてて、ゲーム業界のCGのハイエンド化と映像業界も視野に入れたタイミングでグッと伸びたんですね…!
3DCGって数年したら新しい方法やツールが出ると思うんですけど、その時代の変化に対して対応できるか否かが飛び抜ける要因にもなるのかなぁと他と比べて思ったりします。
講師陣による学校のレベルが高いと思われる理由
CG業界サロンミーティングの様子です pic.twitter.com/obYSFmVCjQ
— 九州デザイナー学院ゲームクリエイター学科 (@kdggame) 2018年2月21日
ーー個人でずば抜けて3DCGが凄い学生は全国にチラホラいるかと思いますが、 学校レベルで凄いところって他で思い当たらないんですよね…。ぶっちゃけ九州デザイナー学院は3DCGに関しては全国でトップクラスだと思ってます。
先生方:当学校に一目置いていただきましてありがとうございます。
先生方:通常学校では、教本に従って進める形ですが、当学校では大枠の流れがあるものの、ベースは企業が求めるスキルを最低限のポイントに置き、それに必要な技術、不足しているモノを補う個別のカリキュラムになります。
先生方:一見して、他校と変わらないカリキュラムですが、目指す目標、質が「製品(商品)レベルの完成度にする」こだわりを講師陣が持っていますので、それをそのまま、学生に伝えている結果だと思います。
先生方:これは、技術よりも「思考」をとことんして形にする。という事にポイントを置いています。
ーーなるほど…思考を特に大事にしてるのか…。
話を聞く限りだと最初から「プロ」としての意識を持たせる環境を作れてるのが強いのかもしれないですね。
学校と学生両方の意識レベルの話
ーーただ、そういったプロを前提にした志で教えてる学校は他にもあるかと思うんですが…その中で突出してるので他にも差別化出来てるポイントがあるような気がしていて…。
先生方:学生たちは、学校が開く8時30分から20時30分に閉まるまでCG制作とデッサンなどのアナログを繰り返しやります。 (※夏休み・春休みなど長期休暇中も学校が開いていれば朝から学校が閉まるまで作業をします)
先生方:授業の空き時間や放課後は1年生と2年生は同じ教室で一緒に制作作業です。1年生はわからないところがあれば2年生に教えてもらいます。そのうち2年生の生活リズムを1年生が真似します。
先生方:こんな生活を強制されるわけでもなく自主的に行っています。
先生方:どんな教え方をしているのかとよく聞かれますが、(CGWORLDの北田さんの取材記事でも話しています)学生たちとは技術的な話よりも作品の方向性やクオリティについてのディスカッションがメインですね。CGのことを教えるというよりは、この環境で学ぶことが重要だと考えています。
ーー学校単位でそのモチベーションを維持できてるの凄い…。
環境が重要だと先生方は考えてるんですね、自分も過去に美術予備校に通ってた時に環境のもたらす影響を体感してたのですごく納得できます。
まとめ
話を聞いた印象として技術的な面よりも精神面が他と大きく違うように感じました。
技術を教えることが出来ても「どれだけやるか」は本人次第な部分があって、その精神面を育てられるのはかなりデカいと思ってて。
トップクラスを見据えた意識が学生と先生の両方から伝わるし、短期間でクオリティを上げるにはどうすればいいか、プロを唸らせる作品を作るにはどうしたらいいか、を見据えて計画的に作った上で実現できてる部分も学生のマインドじゃないなぁと…。
それを可能にしてるの環境に九州デザイナー学院のエッセンスを垣間見た気がします。
いや本当に学生時代に知ってたら行きたかったよ
さいごに
協力していただいた栗本さん、野路さん、先生方ありがとうございました!
ちなみに今回話を聞かせていただいた九州デザイナー学院のゲームクリエイター学科はTwitterで学生作品を投稿してるので興味のある方はぜひフォローしてみてください。
九州デザイナー学院ゲームクリエイター学科のTwitterアカウント(@kdggame)
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